新入社員が入ってくる新年度、毎回入社式がテレビでも見られますね~大学を出るなどして、希望に胸を膨らませて新入社員として、仕事をはじめていきます。
でも、バイトなどをしていたら違うのでしょうが、経験がない新入社員には、自分が経験したことがない世界にはいることになるのかも、しれませんね。。。
この話は正木信太朗さんの本「神社怪談」からの、不思議な話です。
社会人4年目の立花君の体験した話~
彼は大学を卒業後、顧客のシステムインテグレーションを一括で受託する事業を専門にした企業に入社した。
最近では一般的な業態で顧客先に社員を派遣してそこの従業員と連携して、仕事を進めるタイプのビジネスモデルであります。
彼も例外ではなく、入社して二週間は社会人マナー研修やスキル研修を受けていましたが、その後すぐに客先常駐員として外部にだされたました。
派遣されたのはある事務所だった。
典型的な昭和な所長、せわしなく出入りする営業のもの、そして何人かの女性職員がいました。
自己紹介の日から、三週間もすると、橘君は悩みができました。。。
立場のよわい派遣の人間を、そこの職員がいじめるのは、よくあることで社会問題にもなっています。
橘君が苦手だったのは、ひとりの関西なまりの中年女性。もう一人はつねに駄菓子を食べている、とても太った30代の独身男性でした。
陰湿ないじめの数々
中年女性からはパワハラばかりではなく、セクハラをされたり、帰り際に仕事を押し付けられたりしました。
ことわると仕事で必要な会話さえ無視される。勝手に机をロックされる。道具が取り出せなくなり上司に怒られるはめになったり
自分のミスも橘君のせいだと主張して、クレーム騒ぎにまで発展したことも。
もう一人の独身男性からは、何か些細なミスで誤字脱字でも、一時間以上もねちねちとなじられます。
弁当にお茶をかけられたり、何もしていないのに廊下ですれ違いざま、胸をなぐられたこともありました。
心底うんざりして橘君は、本社の社長に訴えたが、まともに聞いてはもらえませんでした。
初めての会社でもあり、両親にも心配をかけてしまうので、できれば辞めたくない。。だがどうしたらいいのか考えも浮かばなかった。
悩んだ末に神にすがることを思いついた。
強引に一週間休みを取り、彼は旅行をすることにしました。
そして主要な神社を巡っていきました。
三日目にはめぐる神社もなくなったころ、当てなく市内を歩いていたときに、路地に入っていきました。
彼はなにかに導かれるように、歩いていきました。
車一台が通れるかどうかの路地を、ふと目をあげると、石の鳥居が現れました。石灯籠と狛犬を両脇に持つ、鳥居をくぐっていくと、白い石畳が左側にカーブしていました。
左手に手水舎、その先に本殿、左に社務所が見えてきました。
有名な神社なのか、家族連れやカップルの観光客がいっぱいいました。
参拝の後、この神社は悪縁を断ち、良縁をむすぶ神様だと知った。
何かのお導きかもしれないと思った橘君は、絵馬を買って、具体的に願い事を書いて奉納することにしました。
絵馬を書くのは初めてなので、みんなが書いた絵馬をみてみることにしました。
「いじめから逃れたい「」「旦那と離婚したい」「隣人が引っ越しますように」「病気と縁を切りたい」「上司が会社を辞めますように」
「夫の禁酒、禁煙、禁ギャンブル」みんな、思い思いの苛立ちをかいています。
そのうちのひとつの絵馬にくぎづけになった。。。
多くの人が神社で借りた「黒いマジック」で願いことを書いていましたが、その絵馬は赤い文字で書かれていました。
私は〇〇さんと結婚を前提につきあっていましたが、私の親友と結婚しました。そして子供も生まれました。私は二人を許してもいいと思うのですが、どうしてか生まれた子度のことを思うと、はらわたが煮えくり返るように、つらいのです。
どうか・・私にわかるように殺してください…二人の住所・・名前
赤い字で書かれた文字の威圧感は尋常ではなかったそうだ
気になってほかの絵馬を見てみると、100枚に1枚、200枚に1枚くらいで、赤い文字で書かれた絵馬を発見しました。
そのどれもが、縁切りと原因になった人物の死を望んでいました。
恨みの強さに、うすら寒くなった橘君であったが、根拠もなく赤文字のほうがご利益をもらえる気がしてきた。
さっそく赤いマジックを買って絵馬に、中年女性と太った独身男性の詳しい個人情報を、恨み言と一緒に書きなぐった!
仕事に戻った日・・早めに出勤してみた。
長期休暇だったために何か言われるのではと思ったが、30代の独身男性は出勤していません。
この土日で急に体調を崩して入院したのだそうで、容態は悪そうで休職するかもしれないという。
さらに中年女性は出社してこなかった。
この後電話があり、小学校で娘がインフルエンザをもらってきたらしく、うつされたらしい。
インフルエンザは指定感染症で、医師から完治の診断書がでるまでは、出社できない決まりになっている。
あの神社で書いた絵馬にはほんとうに後利益があったのだと思いました。
そのあと2週間は、今までにない快適さで仕事ができました。
そしてお礼回りに行こうと思っていたところ・・
10日ほど、立った日のこと事務所の全員に、会議の招集がかけられました。
内容はあの中年女性と、独身男性のことでした。
中年女性はインフルエンザ脳炎になっていて、寝たきりになり回復はみこめない。。いずれ退職になるので、誰が彼女の仕事を引き継ぐか?
太った男性はジープ病になっていて、肥満の人に多い病気で、肛門と尾骨のあいだの皮膚に袋状のしこりが生じ、その周囲にある体毛が皮下に埋まっていくという奇妙な病気だ。
患部は腫脹し、圧痛や自発痛をともない排膿がみとめられるようになるという。手術はしたものの、病状はかんばしくなく、いつ治るかもしれない。。。
彼も復職ができずに、退職になると話しました。
橘君は茫然としていました・・・・
喜んだことは確かだが、早く御礼回りにいかないと!
次の休みには、あの神社へと急ぎました!
神社に行くと「絵馬掛場」の絵馬が少ないので、どうしたのかと聞きました。すると・・・
絵馬をかける人が多すぎて、本来一年は残すのですが今は半年で処分しています。
恨みつらみが増えているんですかね?
自分の絵馬はまだあるのだろうか?
見ただけでは、半年のものか、昨日のものかわからないだろう・・
橘君は絵馬にちかづいていった。。
たしかに自分の絵馬はそこにあった。しかし、真ん中に亀裂が入って最初は自分のものとおもわなかった。
「不気味だな・・・」
事実として呪ったわけではないが、縁を切りたいと願った二人が、ものの見事に姿を消した・・根拠はないが、それが本当に薄気味悪かった。
「ほかの赤字絵馬はどうなんだろう?」
おなじく赤字の絵馬を確認していくと、どれも亀裂がはいったり、一部が欠損していたりとか不自然に破損していました。
とくに自分が絵馬を書くきっかけになった、あの不気味な絵馬はきれいにまっぷたつに割れ、地面に落ちていた。
「ああ、この人も願いが成就したんだな」それを見た彼は感じ取ったという。